民主党青年委員会が主催する「民主党大学2015」が18日、長崎市で「核なき世界に向けて」をテーマに開催された。昨年は東京で1年を通して開講した民主党大学は、今年は各地に出向いて開く方針。青年委員会の全国大会を戦後70年の被爆地・広島で開催したのに続き、もうひとつの被爆地である長崎で、九州・沖縄ブロックの地方議員の運営により開かれることになった。この日の講座には、党長崎県連が主催する「民主党長崎政治アカデミー」の受講生20人も加わった。

 約150名の参加者はまず、市内の平和公園に集まり、受け付け後、平和祈念像の前で記念撮影を行い、黒岩宇洋・民主党青年委員長が代表して原爆犠牲者に献花した。その後、フィールドワークとしてボランティアガイドの平和案内人の解説を聴きながら、平和公園、原爆落下中心碑、長崎原爆資料館を見学した。

 市内のホテルに移動して講座が始まり、まず党長崎県連代表の髙木義明衆院議員が「この大学が大きな成果を上げ、世界に向けて発信してほしい」と歓迎のあいさつを行った。「学長」の黒岩青年委員長が、「来年から18歳へ選挙権年齢が引き下げられるので、若い人たちとともにお互いに学び、政治参加の権利を行使できる機会を増やしていきたい」と運営のコンセプトを説明し、「私もともに学ぶ一人として、価値ある時間を過ごしたいと思う」とあいさつした。

 


 基調講演として、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長で教授の鈴木達治郎氏が、今年4月27日から5月22日まで国連本部で開かれたNPT(核不拡散条約)再検討会議が最終合意できなかった経緯を説明し、「核兵器の非人道性を巡る議論から、核兵器禁止の法的枠組みを構築しようとする動きが加速しており、その中で、特に『核の傘』の下にある非核保有国、わけても被爆国日本の責任は大きく、『核抑止』に依存しない安全保障体制を日本は目指すべき」と提言。一方で、核兵器に利用可能な核物質の増加問題が原子力平和利用と核不拡散問題の焦点であり、特にプルトニウムは日本の在庫量が非核保有国の中で突出していることを紹介した。

 パネルディスカッションは、原水爆禁止日本国民会議議長の川野浩一さん、長崎市内の高校2年生で第18代高校生平和大使の内野璃奈さん、鈴木さんと蓮舫代表代行が加わって進めた。コーディネーターは山田朋子長崎県議が務めた。

 内野さんが務める「高校生平和大使」は1998年、NPTに非加盟のインドとパキスタンが相次いで核実験を強行したことに危機感を募らせた長崎の約50の平和団体が、被爆地の声を世界に伝えるために、未来を担う若者を「高校生平和大使」として国連に派遣することにしたもの。内野さんはその第18代大使として、高校生1万人署名活動実行委員会の仲間たちと今年8月にスイス・ジュネーブで開かれた国連軍縮会議に参加し、今年集めた16万4176筆の署名を提出するとともに、本会議でのスピーチや各国の参加者たちとの交流を行ってきた。

 内野さんは「平和への思いは国境を越えて誰もが持っていることなんだと感じた」とスイス訪問の感想を語り、「被爆地に住む被爆3世として、核兵器の廃絶、核の恐ろしさ、平和の大切さを後世に伝えていくことが私たちに課せられた使命だと思っている。実行委員会のメンバーとも協力して、署名活動を精力的に行って、日本だけでなく、もっともっと多くの世界の人々に知ってもらえるように活動を続けていきたい」と力強く表明した。

 続いて発言した川野さんは5歳の時に長崎で被爆。直後に目にしたおびただしい死体の様子や亡くなっていった人たち、その後の生活の困難さなど生々しい体験を語りながら、今年8月にNHKが行った世論調査で、広島にいつ原爆が落とされたか正しく知っている人は広島で69%、長崎で50%、全国で30%。長崎で落とされた8月9日の日付を正しく答えたのは広島で54%、長崎で59%、全国で26%だったと紹介。さらに、安全保障法制の議論にも触れ「戦争を知識として知っているが、今の自民党の中に戦争の体験者がいない。安倍さんはこの日を待っていたとしか思えない」と被爆体験や戦争体験が風化することに警鐘を鳴らした。また、世界産業遺産の登録で観光ブームになっている長崎県の「軍艦島」についても、「その島に強制連行された中国や韓国の人たちがどれだけ苦しんだか。板1枚で泳ごうとして、対岸まで着かずに多くの人が溺れ死んだ」と負の歴史も持つことを指摘し、「戦争を考える上では、自分たちの加害責任と被害とを同時に考えていかなければならない」とも訴えた。

 これらの発言を受けて、蓮舫代表代行は、「戦後70年を経て、われわれの世代は何を学び、何をしなければならないのか、この機会に一緒に考えていきたい。核廃絶、核のない世界を理想にすぎないと言う人がいるが、唯一の被爆国である日本がなすべきことは、この理想を現実にすることだ。核なき世界に与野党はない。衆参両院は日本国の意志として核廃絶を訴えるべき」と語り、民主党の岡田克也代表が外務大臣在職時に、イラン、イスラエル、中国、フランス、インドや国連を訪問し、北東アジアで非核地域を作っていこうと提案してきたことに触れ、「政治家の活動としてだけでなく、長崎と広島とそれ以外の地域との間に明らかにある意識の差を、各都道府県の議員の仲間のネットワークを活用して埋めていく、そしてさらに国会の場での平和のための法制。権力側が間違ったら身体を張ってでも止めていきたい」と感想と今後への抱負を語った。

 こうした問題提起を受けて参加者は10班に分かれ、「核兵器は世界の平和と安定に必要か」「戦争を経験していない世代が平和を継承して行くにはどうすればいいのか」の2つのテーマについてグループディスカッション。終了後に各グループの代表として大学生たちが議論の内容や結論を全員の前で発表した。

 閉会に当たって黒岩委員長は「皆さんの真剣な議論がきっといい地域や日本や世界をつくっていくんだと確信できるすばらしい一日だった。ここ長崎で皆さんからいただいたものは感動でした」と感謝の言葉を述べた。